核実験を監視する(4/15号)
平成19年 4月 15日号
今回の特集は
核実験を監視する
石井威望のコメント
包括的核実験禁止条約(CTBT、1996年)で、あらゆる環境での実験が禁止される国際監視制度が整備されつつある。また、ウィーンのCTBT技術事務局のデータセンターへ、地震波、放射性核種、水中音波、微気圧振動などの観測データが世界中から集まっている。そして、世界300箇所(日本国内10箇所)が常時稼働してデータ解析を行っている。
例えば、天然自然の地震波と核爆発によるものとの区別、低周波の不可聴音波の問題などが研究されている。いずれにせよ広範囲の科学技術を結集することによって地球上の平和と安全が維持されている。今回の執筆者は、日本原子力研究開発機構の篠原伸夫氏、直井洋介氏である。
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ポイント
1.質量数が235のウランあるいは239のプルトニウムが材料
原子爆弾は、質量数が235の同位体であるウランあるいは239の同位体であるプルトニウムを材料とし、それらを、核分裂反応が生じる状態(臨界)にして放出させた核分裂エネルギーを兵器として利用するものである。なお、原子力発電所の軽水炉で使用されているプルトニウムはその性質上、原爆の材料には適さない。
2.CTBTにより、核兵器の拡散/高度化の防止へ
部分的核実験禁止条約(1963年)により地下以外での核実験は禁止されたが、放射性物質の放出は確認され続けた。そして包括的核実験禁止条約(CTBT)の採択(1996年)により、あらゆる環境における実験が禁止され、核兵器の拡散/高度化の防止が目指されることとなった。国際監視制度の整備は進行中で、2010年末に完了予定である。
3.世界約300ヵ所以上の施設から集積されたデータを解析評価
CTBTの国際監視施設は世界に300ヵ所(日本国内は10ヵ所)以上あり、まず放射性核種については、半減期が数時間から数日のものを対象とし、微粒子状になって観測所まで運ばれてきたものをフィルターに捕集することにより測定を行う。放出源の推定は、時間を遡って計算するために、大気拡散バックトラッキングソフトウェアを使用する。その他の監視技術としては、地震波、水中音波、低周波の不可聴音波などの検知があり、それらデータがウィーンのセンターを通して、各条約締約国に配信され、それぞれにおいて解析評価されることになる。