ロボティクスと情報通信の融合が拓くイノベーション(4/1号)
平成19年 4月 1日号
今回の特集は
ロボティクスと情報通信の融合が拓くイノベーション
石井威望のコメント
近年、学生の希望専攻分野が電子・情報系からロボット分野などにシフトしている。ITだけでは限界があることに学生が気付いてきたからではなかろうか。ロボットが、(今までもある程度IT通信システムとの連携はあったが)今後産業用ロボットから生活用ロボット、医療福祉関係へ用途が拡大するに従い、ITとの連携は本格化する筈である。
量子情報システムの研究開発が進むIT分野では高機能化も進み、将来のロボットへの影響も予想されるが、当面は、現状のIT技術水準をロボットに組み込んでシナジーをおこさせる技術が必要である。今回の執筆者は、科学技術振興機構研究開発戦略センターの石正茂フェローである。
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ポイント
1. 社会へのサービス実現という観点からのイノベーション創出
近年、「実世界の人間に関する情報、環境情報、物・事象のもつ情報などを的確に収集し、サイバーワールド内での情報処理を実行し、さらに実世界に対して適切な物理・化学的効果を及ぼすことで、人間の感覚運動機能を支援・強化・代替することを可能にする技術体系」、すなわちロボティクス技術(RT)と情報通信技術(IT)の「融合」=IRTが提唱され、社会へのサービス実現という観点からするところの、あらたなイノベーション創出が期待されている。
2.広く科学技術のドライバーとしての「IRTプラットフォーム」
広汎な応用性、分野を超えた波及効果など、「IRTプラットフォーム」は既存技術の単なるインテグレーションにとどまらず、広く科学技術のドライバーにもなりうる。「融合」を具体的に推進するには、社会ニーズを充足するための高い研究目標を掲げることが最も有効であり、官・学・産がそのスタイルにそって開発に取り組み始めている。
3.「融合」によって「医工連携」の遅れを克服
日本の「医工連携」における臨床研究体制の遅れも、定量性・再現性や情報収集・処理などの点において優れるIRTによってやがて克服されるだろう。すでに、高度なMRIシステムを構築することにより手術室で「空間知能化」が実現するなど、先端医療の現場ではIRT的アプローチが一部実現している。また今後、エンド・ユーザ視点から信頼できる度合い=ニュー・ディペンダビリティもより追求されていくだろう。