地域・中小メカトロニクス企業のIT活用戦略 (1/15号)
平成19年 1月15日号
今回の特集は
地域・中小メカトロニクス企業のIT活用戦略
石井威望のコメント
今回の執筆者は、岐阜県立国際情報科学芸術アカデミー(略称IAMAS)神成淳司講師である。県立のIT関連専門学校として、卒業生が地場の高度な製造技術をもつ優良中小企業を就職先にしている。IT技術者は大都会のITベンダーへの就職が多いが、給与水準や福利厚生の面では、地元の優良製造業の方が良い。また地元への就職希望が根強い点もあげられる。
更に各企業の海外進出先の工場ともビデオスカイプなどインターネットの活用によりほとんど無料の通信を常時行っている点も見逃せない。おそらく、大規模製造業のIT化が第1段階とすれば、今後はIAMAS型の地場に密着した中小規模製造業の第2のIT化段階になるであろう。
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ポイント
1. 壁に突きあたる中で中小企業の中から独自の取り組みが
日本のメカトロニクス産業におけるIT活用はすでに1990年前後からさまざまになされてきたが、付加価値、価格競争などの面で壁に突きあたり、現在、いくつかの中小企業が独自な取り組みを進めている。
2. 熟練技術者の知見のIT化やSkypeなどによる具体的取り組み
たとえば、製造ラインを統括する大型汎用コンピュータの制御に関連する熟練技術者の知見は通常あまり文書化・数値化されていないが、それを、遠隔地から複数の製造工程を制御するというシステムを導入することによりIT化を実現し、人員・移動コストの削減に成功した企業のケースがある。またアジア拠点での非熟練業務の作業効率低下の原因であったコミュニケーション上の問題を、インターネット電話Skypeを通じての作業内容確認により解決した企業も存在する。
3. ソフト開発に地元出身社員を重用することで地域活性化にも
上記2つの企業の事例からは3つの特徴を抽出できる。@海外(特にアジア諸国)との連携を円滑にするための方策としてITを利用している。A無償ソフトウェアを活用している。オープンソフトウェアと違い、最新の技術が反映され、サポートも充実しており、またSkypeにみられるように他との連携も容易だからである。B必要なソフトウェアを自社開発している。市販のものでは独自技術や工程を伸展させることが難しく、また外部のITベンダーへの委託はコストがかかる一方で、地元出身の社員に担当させることにより、地域活性化にもつながるからである。