“安らぎ”を提供するロボット「パロ」―その家庭・医療応用 (9/15号)
平成18年 9月15日号
今回の特集は
“安らぎ”を提供するロボット「パロ」―その家庭・医療応用
石井威望のコメント
最近は産業用以外に家庭・医療・介護・福祉関係へのロボットの応用が広がっている。欧米とは異なりロボットとの共生に抵抗感が少ない我が国の文化的伝統(一種のアニミズム的)が、共生促進的要因になっている。
人間以上に人間的な手塚治虫ロボットを当然のものとして育った世代、あるいは劇画等で人間を助ける仲間としてのロボット観の定着は、安らぎを求めだした高齢社会への切り札として、ロボットの登場は自然かもしれない。東京大学のIRTプロジェクトをはじめ広範な関連分野の研究も始まっている。今回の執筆は、産業技術総合研究所・知能システム研究部門の柴田崇徳氏にお願いした。
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ポイント
1. 人に安らぎを与えるロボット「パロ」の商品化
ペット動物のように人に楽しみや安らぎを提供するロボットの開発は1993年から行われ、「アザラシ型メンタルコミットロボット・パロ」として2004年に商品化された。動物型ロボットがペット動物に代替するためには、触り心地、抱き心地、温かみなどの生き物らしさを持つとともに、刺激に対する反応や振る舞い、長期間の飼育に耐えられることなど生活の中での人との持続的相互作用が期待される。
2. 様々なテクノロジーとアートの融合の成果
パロの開発・改良には、心理実験、要素技術の開発、様々なロボットの試作、人との相互作用の実験、医療福祉施設での長期的なロボット・セラピーの実験などを重ねてきた。様々なセンサ、複数のアクチュエータ、マイコンによる分散制御ネットワーク、衛生面での抗菌加工、抜け毛防止、電磁シールド、2万ボルトの耐電圧試験、落下試験、10万回を超える撫で試験などを施してきた。ソフトウエア面でも飼い主に愛着がわき、飽きられにくいよう、名前や行動の学習機能などを持たせた。
3. ロボット・セラピーの社会浸透にはビジネスとの相互作用
パロの実用化は、国内、海外で高い評価を得ており、各国からの取材、展示要望も多く、利用者の満足度も高い。パロ製造を通じて富山、茨城など地域社会との連携も深まっている。今後さらに品質と価値の向上、医療福祉施設でのロボット・セラピーなど社会浸透が期待されている。そのためにも、ビジネスと研究開発の相互作用は相乗効果を持とう。