ロボカップ戦略―研究計画推進の意義と価値 (8/15号)
平成18年 8月15日号
今回の特集は
ロボカップ戦略―研究計画推進の意義と価値
石井威望のコメント
今回の執筆者は、大阪大学大学院工学研究科知能・機能創成工学専攻の浅田稔教授である。ロボカップという言葉は極めて新しい専門用語であり、1993年に執筆者とソニーコンピュータサイエンス研究所の北野宏明氏らによって日本発の研究プロジェクトとしてスタートした。1997年には、第1回ロボットサッカーワールドカップが名古屋で、人工知能国際会議とともに開催され、今日に至っている。
最近の2足歩行ヒューマノイド型ロボットなどの発展を踏まえ、その計画目標自体の21世紀の夢を盛り込んだ魅力は、益々高まっている。最近では、サッカー場にとどまらず人とロボットの共生の場を街全体にまで広げる計画も進行している。
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ポイント
1. サッカーでロボティクスと人工知能の研究を促進させる
ロボカップは、「明確で」かつ「挑戦的な目標を掲げて」「システマティックに研究開発を行うということ」を基本的な考えとしながら、複数の自律ロボットにサッカーの試合を行わせることにより、ロボティクスと人工知能の研究を促進させる試みであり、1997年に第一回が開催されて以来、その参加者数は驚異的に伸び続けている。
2. 「夢」「実現可能性」「次世代産業基盤」のためのプロジェクト
たとえ直接的な社会的・経済的価値は少なくても、その最終目標に向けた過程のなかで様々な技術革新と波及効果を伴うロボカップは、いわば「夢」「実現可能性」「次世代産業基盤」などの要件が達成できる「ランドマーク・プロジェクト」の典型である。現在のロボカップのリーグ構成は、低コストで多くの研究者が参加可能なシミュレーションリーグから、小型ロボットリーグ、中型ロボットリーグ、ソニーAIBOによる4足ロボットリーグ、完全自律型のヒューマノイドリーグ、さらには子供達の表現力を評価するダンス競技まで取り入れたロボカップジュニアに至るまで、極めて多彩で豊富である。
3. 街全体を知的人工物とすることを目指すロボシティコア
ロボカップとは別に、継続的な実証実験を行うためのプロジェクト・ロボシティコアが大阪北梅田地区「ナレッジキャピタル」で進行中であり、研究、教育、産業化を三位一体としながら街全体を知的人工物として人とロボットの共生を目指すその試みは世界的に画期的な試みである。