第3期科学技術基本計画(7/1号)
平成18年 7月 1日号
今回の特集は
第3期科学技術基本計画
石井威望のコメント
平成18年度にスタートした第3期科学技術基本計画(期間5年)では、人材育成を重視している。これは、米国のパルミサーノレポート「イノベート・アメリカ」のスローガンで、人材育成に重点を置いているのと軌を一にしている。科学技術創造立国は、個人の自由な創造力に依存する基礎研究の上に築かれる政策課題対応型の本格的な重点投資戦略によって実現される。
21世紀の基礎科学における宇宙観の変化を、現実の社会が恩恵を受けるための政策に結びつけるのが政府の役割である。もちろんアジアを含めた国際的な競争的協力関係も欠かせない。今回の執筆者は、東京農工大学・産官学連携・知的財産センターの川端和明教授である。
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ポイント
1. 「社会・国民に支持され、成果を還元する科学技術」のための第3期
5年周期で一巡する科学技術基本計画は平成18(2006)年度より第3期がスタートした。その基本姿勢として「社会・国民に支持され、成果を還元する科学技術」「人材育成と競争的環境の重視〜モノから人へ、機関における個人の重視」が掲げられ、また「科学技術創造立国」という国家目標に見合うべく約25兆円の巨大な投資総額が見込まれている。
2. 基礎研究・政策課題対応型研究開発それぞれにおいて戦略的重点化
基礎研究は、「研究者の自由な発想に基づく」ものと「政策に基づき将来の応用を目指す」ものとに区別され、それぞれの意義を踏まえて推進されることになった。一方、政策課題対応型研究開発は8つに分類され、とりわけ各分野内において重点投資する対象を「戦略重点科学技術」として選定し、集中を徹底した点に第3期の特色がある。このような仕組みにより、きめ細かで効果的な資源配分が可能になるであろう。
3. 人材政策とイノベーション創出を重視した科学技術システム改革
戦略的重点化による投資効果をさらに高めるべく、科学技術システムの改革として、若手・女性・外国人研究者のサポートに配慮した「人材の育成、確保、活躍の促進」、研究資金配分をめぐる公正性・透明性の確保、産学官・地域連携の強化、府省横断の推進を企図する「科学の発展と絶えざるイノベーションの創出」、研究インフラの整備、知的財産への対応を目指す「科学技術振興のための基盤の強化」、アジアを重視しながらの「国際活動の戦略的推進」が掲げられた。