スピントロニクス技術の産業応用 (6/15号)
平成18年 6月 15日号
今回の特集は
スピントロニクス技術の産業応用
石井威望のコメント
電子の持つ電荷と、微少な磁気(スピン)という2つの性質の中で、従来はもっぱら電荷の方を使っていたが、磁気的な性質も同時に使う「スピントロニクス」が21世紀の重要な技術的フロンティアになり始めている。
すでにスピントロニクスの第1次のイノベーションとしては、1990年代以降、数々の実用品が登場している(例えば、大容量のハードディスクなど)。第2次のイノベーションとして、1995年に発見されたトンネル磁気抵抗効果を応用した新しいタイプのメモリ(MRAM)が、理想的な特性を実現するユニバーサルメモリとして2〜3年後の実用化が期待されている。今回の執筆者は、産業技術総合研究所エレクトロニクス研究部門の湯浅新治研究グループ長である。
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ポイント
1.電子工学と磁気工学が融合した新分野「スピントロニクス」
電子はマイナスの電気(電荷)を帯びるとともに、小さな磁気(電子スピン)も帯びている。半導体エレクトロニクスでは従来、電子の電荷のみを活用、一方、磁気記録の分野では、電子スピンのみを活用してきた。これに対して、電子の持つ電荷と電子スピンの両方を活用して新しい機能を開拓する新しい分野「スピントロニクス」が発展を見せている。
2. 高性能なスピントロニクス素子「MTJ素子」の開発
動画像は、静止画像(フレーム)が時間の経過とともに映し出されることによって作成され、カラーテレビでは1秒間に30フレームが放映される。検索には、大容量のストレージメディア上にある複数の動画像を含むデータベースから利用者の持つ動画像と同一または類似の動画像を探し出す技術も必要となる。そこでは画素の明るさ(諧調値)それらの差異(評価値)の大小も測定し、両画像の異同を見分ける。また動画像の検索技術には、フレーム、ショット(フレームの列)、シーン(ショットの集まり)といった階層的構造も組み込まれている。
3. 究極のメモリ「MRAM」や次世代ハードディスクの開発
トンネル障壁にMgOを用いたMTJ素子は、次世代ハードディスクの磁気ヘッド(情報読出し用磁気センサー)として数年以内に実用化されるものと予想される。さらに、MTJ素子を記憶素子に用いた新しいメモリMRAMは、不揮発記憶、高速動作、優れた耐久性などの理想的な特徴を備えた究極のメモリになると期待されている。現状ではMRAMの大容量化に向けた技術的な壁の突破が課題となっている。