映像検索技術―その必要性の増大と技術革新について (6/1号)
平成18年 6月 1日号
今回の特集は
映像検索技術―その必要性の増大と技術革新について
石井威望のコメント
文字通り、動画像中心の時代が始まっている。世界で最も高性能で経済的な水準に到達した日本の情報社会のインフラを、ユーザが本格的に活用しようという動きが、日常的な生活のレベルで起きているのである。動画像は、以前の音声、文字、線図等に比べると格段に理解が容易であり、インターネットの普及によりグローバリゼーションを加速している。その結果、爆発的な情報量の蓄積が進んだ。
このようなディジタルコンテンツを有効活用するためには、膨大な蓄積の中から効率よく情報が検索できなければならない。その面でも、近年急速な技術革新がみられる。今回の執筆者は、北海道大学大学院情報科学研究科の長谷山美紀教授である。
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ポイント
1. ディジタルコンテンツ利用者の不満に答えるには
情報収集のためのインターネット利用が圧倒的な多数を占め、個人が大量のディジタルコンテンツを保有する時代となったが、利用者には「欲しいコンテンツを探すのが大変」という不満が強い。これを解消するためには、画像、文字、音声の三種類のデータから必要な情報を効率的に検索するための技術の開発が必要である。
2. 動画像データの検索技術
動画像は、静止画像(フレーム)が時間の経過とともに映し出されることによって作成され、カラーテレビでは1秒間に30フレームが放映される。検索には、大容量のストレージメディア上にある複数の動画像を含むデータベースから利用者の持つ動画像と同一または類似の動画像を探し出す技術も必要となる。そこでは画素の明るさ(諧調値)それらの差異(評価値)の大小も測定し、両画像の異同を見分ける。また動画像の検索技術には、フレーム、ショット(フレームの列)、シーン(ショットの集まり)といった階層的構造も組み込まれている。
3. ユーザーインターフェイスの検索技術も不可欠
利用者が自分の望みの画像を明確に意識していない場合の画像検索には、類似の画像を分類し、可視化して提供するシステムや提示された複数のサイトから良質の画像のランクづけを行うシステムなども研究されている。それによって利用者の選択を補助することができる。こうしたユーザーインターフェイスも含めた情報検索技術が求められている。